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プリウス応援ページ
●ハイブリッドカー:
複数の動力源を 組み合わせて,状 況に応じて動力源を同時にまたは個々に作動させて走行する自動車」。一般 的にはひとつの動力が電気であることが多く、ハイブ リッド電気自動車のことを、単に「ハイブリッド-・カー」と呼ぶことが多い。この分野では特に日本の技術が大きく先行しており量 産車の多くが日本製です。
これはマスキー法などの排気ガス浄化の規制が始まった時のCVCCなどと同じように日本が世界に誇ることのできる画期的な先進技術といえます。 アイデアや技術は1970年代からあり、多くの試作車が作られてきましたが、市販車として月産千台以上の量 産車となると現在のところトヨタプリウスしかありません。普及はまだまだこれからだと思われます。(2004.4月記述)
このページはハイブリッド自動車の独学ページです。ここに出てくる絵やイラストは本物とは異なります。たとえば、プリウスのEMV表示も発電機の絵はありませんが、ここではモーターと発電機の図をわけています。
●日本国内で市販されている主なハイブリッド電気自動車:
下の絵はずんぐりスケールになっています。本物はずっと細長い形をしています。
 
シリーズハイブリッド方式 THS IMA
IMA THS-C THS-II
  ●ハイブリッド電気自動車の構造
  ハイブリッド電気自動車のシステムの例として多いのが、内燃機関のエンジンと電動機の2つの原動機で駆動するものです。
少し省略して書けば、(ガソリン)エンジンと(電気)モーターで動く車と言えると思います。エンジンがディーゼルの場合も考えられますが、ここではガソリンエンジンで代表して考えることにすると、燃料は「ガソリン」ということになります。
ハイブリッド自動車を、「ガソリン」と「電気」で走る車と呼ぶこともありますが、その電気は外部から供給されているのではなく、基本的にはガソリンエンジンが発電機を動かして作ったものですから、ハイブリッド電気自動車の「エネルギー源」は化石燃料であるガソリンです。
なぜハイブリッド自動車の効率がよいかと言うと、ガソリンエンジンだけでは効率の悪い条件のところを、エンジンとモーターの協調あるいは相乗効果 (シナジー・イフェクト)によってロスを少なくしているからです。
ハイブリッド自動車のシステム(以下単にシステムとします)はその構造によって、シリーズハイブリッド電気自動車とパラレルハイブリッド電気自動車の2つに大別 できます。
定義としては、
  1. シリーズハイブリッド:2つの原動機を直列に構成し前段の出力が後段の入力になるシステム
  2. パラレルハイブリッド:2つの原動機が並列で協働するシステム

となります。シリーズハイブリッドの車はエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれを電池に一旦ためておいた電力を用いて、モーターで走行する車です。
パラレルハイブリッドというのは、エンジンとモーターの出力がいずれも駆動源となるため、エンジンのみで走行、モーターのみで走行、エンジンとモーター走行という3つの方式を適宜切り替えて使用します。
この分類の他に、シリーズ方式とパラレル方式を兼ね備えたシステムもあり、もう少し細かく分類すると次の4種類の方式にわけることができます。

  1. シリーズハイブリッド方式
  2. パラレルハイブリッド方式
  3. シリーズ・パラレルハイブリッド方式
  4. パワースプリット方式
シリーズ・パラレルハイブリッド方式というのは、パラレル方式でありながら、同時にシリーズ方式を実現するためにモーターを2つ装備しています。
トヨタ・エスティマの具体例で示すと、この方式では、エンジンの出力で前輪を駆動して走行しながらモーターで発電を行います。ここで発電された電力はもうひとつのモーターで後輪を駆動することができるので、この部分をみるとシリーズハイブリッドになっています。

パワースプリット方式というのは、シリーズ・パラレルハイブリッド方式の中に含まれることも多いのですが、トヨタ・プリウスだけが採用している方式です。
プリウスは上述のエスティマとは異なり前輪のみを駆動しますが、同じ駆動装置の中にエンジンとモーターだけでなく発電機も備えており、エンジンで 走行と発電を行いながら、その電力で同時にモーターを駆動することができる方式です。ディファレンシャルギヤなどで昔からよく使用されている遊星歯車を用 いたたくみな機構を用いてこれを実現しています。
  ●シリーズハイブリッド方式   ▲TOP
 
シ リーズハイブリッド方式では、エンジンで発電を行い、そ の電力でモーターを動かして走行します。非常にシンプルな方式です。実際は途中にインバータや電池があります。エンジンでで直接駆動するほうが効率が高そ うですが、低回転時にもっともトルクが大きい電気モーターの特性を活かした省エネが可能になります。また十分に大きな電池があればエンジンと停止して余力 があるときにためておいた電力でモーター走行を行うことができるためバスなどの車重の大きな車に採用される傾向にあります。
将来もっと効率のよい大容量の電池などが開発されれば、発電用のエンジンでためておいた電力を用いて混雑した町の中などではエンジンを止めて完全に電気自動車として走行するといったことも考えられます。
とてもシンプルなシリーズハイブリッドですが、減速時に回生ブレーキを働かせて充電することが可能です。
ガソリンエンジンやディーゼルエンジンだけでなく燃料電池自動車なども基本的にはこのシリーズハイブリッド方式の仲間になります。
  ●パラレルハイブリッド方式 ホンダ・ハイブリッドシステム IMA ▲TOP
 
パ ラレル・ハイブリッド方式は内燃機関(ガソリンエンジン)と電気モーターの両方で車輪を駆動する方式です。モーターを駆動するための高圧電池を持ちます が、この電池に充電するのはガソリンエンジンです。 エンジン→発電機→モーターというシリーズハイブリッドを行わないため走行用のモーターが発電機を兼用します。
いくつかの方式がありますが、ここでは市販されているホンダIMA方式(シビック・ハイブリッドに搭載)で勉強することにします。
ホンダIMA方式は、比較的小さな電池を搭載し、モーターはエンジンのアシストという考え方で設計されています。したがってハイブリッドカーにつ きものの エンジンを止めてモーターで走行するというモードを持っていません。IMAがパラレルハイブリッド方式であるため、パラレルハイブリッド方式=モーター走 行ができない、と勘違いする人が多いようですが、これは、エンジンメイン、モーターサブというIMAの設計思想によるものであってパラレル・ハイブリッド の特徴ではありません。
シビックに搭載されているエンジンは1.3リッターの気筒休止VTECという先進のメカニズムを持つリーンバーンエンジンです。もともと低燃費のエンジン を使い、ハイブリッドシステムは加速時などのモーターアシストに使うという考えですからトヨタのプリウスのシリーズ・パラレル方式とは大きく異なります が、減速時にエネルギーを回収するシステムやNi-H電池を用いる点など共通 するところも多くあります。

IMAとTHSを比較するとIMAの方が構造がシンプルで部品の数も減らすことができますが、実際に販売されている車両、シビックとプリウスでは価格があまり変わらないようです。
エンジンを始動します。セルモーターの代わりにクランクに直結のモーター使って始動するため非常に静かにエンジンがかかります。 インサイトには手動5速変速機がありますが、シビックの場合はCVTです。エンジンで発進・加速します。エンジンとCVTの間にはモーターが入っています。
パワーコントロールユニットに内蔵のインバータから電力を供給しモーターで加速をアシストします。ガソリンエンジンが燃料を多く消費する場面 でもーたーが利用されます。
通 常の走行は、エンジンの動力のみで行います。いわゆるクルーズモードですが、この時モーターを使って発電し電池に充電を行うことがあります。クルージング 時は4気筒エンジンの半分を休止させることもあります。プリウスの場合はミラーサ イクルで実質排気量をおとしていますが、いずれもガソリンの消費を抑えるための仕掛けです。 減速時はモーターによる発電制動を行います。電車の回生ブレーキと同じ仕組みですが、送電線ではなく電池に充電します。ほとんどのハイブリッドカーや電気自動車がこの仕掛けを持っています。
停車中はオートアイドルストップ機構が働いてエンジンを停止させますが、条件によってはエンジンが停止しないこともあります。 本来のパラレルハイブリッドでは電池からの電力でモーターで走行するという運転モードが可能ですが、IMAにはありません。この図は実際のIMAには存在しないモードです。モーターおよび電池を小型軽量 化するためにこのモードを採用しなかったようです。
  ●シリーズ・パラレルハイブリッド方式  トヨタ・ハイブリッドシステム THS-C  ▲TOP
 
トヨタTHS-Cは前輪にCVTとモーター、後輪にモーターを持つシリーズ・パラレルハイブリッドです。エアコンのコンプレッサはエンジンでも電動モーターでも動かすことのできるツーウェイタイプです。
THSのように発電機とモーターを別に持つのではなくモーターと発電機は同じ機械で兼用します。したがって前輪だけではシリーズハイブリッドとはならずエンジンで動かした前輪のモーターの電力で後輪のモーターを駆動する時にシリーズハイブリッドとなります。
トヨタTHS-Cは完全に電気的なしかけで四輪駆動として前輪と後輪をシャフトなどでつながず非常に高度な電子制御を行っています。
発進の様子です。前後のモーターに電力を送って発進します。一定速度でモーター走行する時もこのようになります。 発進する時に前輪はエンジンでスタートすることもあります。これはパラレルハイブリッドの状態です。
全開加速の時の様子です。前輪はエンジンとモーター、後輪はモーターで走行します。この状態では充電はできません。 前輪をエンジンで駆動して走行します。この時モーターを発電機として使用してバッテリーに充電を行うことがあります。
減速するときは前後のモーターを発電機として回生ブレーキとしてエネルギーを回収します。 エンジンで前輪を駆動。その力で前輪のモーターを使って発電しその電力で後輪のモーターを駆動します。これはシリーズハイブリッドとパラレルハイブリッドをあわせた動きです。加速時などのエンジンの効率が良くない時は動力を一度電力にかえることがあります。
  ●パワースプリット方式 トヨタ・ハイブリッドシステム THS/THS-II  ▲TOP
 
トヨタTHSシステムの概要
 
発電機を使ってエンジンをクランキング。エンジンを始動します。
これはシステムを起動後、条件によって自動的に行われるためセルモーターのようなスイッチはありません。
エンジンの暖機です。この時、車は動いていないので回転のエネルギーは電力となって電池に蓄えられます。気温やエンジンの温度によってこの長さはずいぶん 異なります。暖機が終わらなくてもさっさと発進してかまいませんので、この状態で長く停車するのはガソリンの無駄 になります。
発進は、モーターで行われます。この時暖機が完了していればエンジンは止まったままです。 発進するとすぐにエンジンが始動します。この時一瞬発電機が動いてエンジンを回します。その後エンジンの動力とモーターの動力で加速していきます。モータが止まることもありますが、そのままパラレルハイブリッド状態で加速することが多いようです。
加速中は、エンジンで走りながら同時に発電しその電力でモーターを回すことがあります。エンジンとモーターのパラレルハイブリッドですが、エンジンの発電でモーターを回しているのでシリーズハイブリッドともいえます。余力があれば電池にも充電します。
少しロスの多い動きにもみえますが、発進加速時のガソリンエンジンのエネルギー効率はあまりよくないため、一度電力に変えてモーターで加速してもトータルで効率がよいと思われる場合はこのモードになります。
全開加速だとこの図のようになることがあります。
エンジンで駆動、エンジンで発電機をまわしてその電力をモーターに送って加速するところは前の図と同じですが電池からも放電してその電力をモーターにおくっています。
加速がおわり一定の速度に達すると、エンジンのみで走ることがあります。
ほとんどの場合、エンジンの出力の一部で発電機を回して電池を充電していますが、条件によっては充電をしない場合もあります。
ある条件ではエンジンを止めてモーターのみで走行することがあります。
エンジンは止まっているためシリーズハイブリッドではなく電池からの電力のみで走行します。この運転は、シリーズハイブリッドでもパラレルハイブリッドでも可能ですが、ある程度モーターの出力があり電池の容量 の大きな車でないとできないようです。
プリウスの場合、エンジンの停止は発電機がエンジンにブレーキをかけて行い、エンジンの次の始動のために適切な回転位 置に固定します。
また、プリウスはバックギアを持たないため、後退するときは、この運転モードでモーターを逆回転させます。
微速前進(クリープ)もこの状態で行われます。トルクコンバータ車だと流体の粘性抵抗でひとりでにクリープ現象が発生してしまいますが、プリウスの場合 は、モーターの回転でこれとどうようの動きを作ります。マニュアル車では半クラッチや断続クラッチでクリープを行いますが、プリウスのモーターによるク リープはコンピュータ制御で行われますのでとても扱いやすくなっています。
アクセルから足を離すとエンジンやモーターは止まり、減速するために車の慣性力を利用して発電を行います。これが回生ブレーキのモードです。
機械ロスや電気ロスがあるため運動エネルギーを全て電力として回収することはできません。
これはハイブリッド車だけではなく電気自動車でも行われる制御です。

なお、ブレーキペダルを踏んでいてもアクセルペダルを踏んでいると回生ブレーキにはならず、油圧ブレーキになってしまいます。
エンジン停止、モーター停止、発電による回生ブレーキもなしの状態です。走行中に動力も制動力も働かない状態があります。要するに車が滑走している状態です。平地であれば徐々に速度が低下しますがやや下り勾配であれば一定の速度で走りつづけられる場合もあります。
図ではクーラー用のコンプレッサーが動いている場合を示していますが、エアコンのスイッチがオフであれば電池もインバータも働いていない状態になります。 プリウスのEMVにはインバータの図やエアコンの動力の図がありませんので上記のような例では矢印が全く示されません。
 
交差点などで停止しているときの様子の1例です。エアコンも動いていないと本当にシーンとした静けさが広がります。  
  ハイブリッド雑感:
  何故ハイブリッドか?
ガ ソリンエンジンで発電し、その電力を直流に変換して電池に貯蔵、電池から電気を取り出して周波数や電圧を変換してモーターを駆動。何ともハイブリッドシス テムはロスだらけの効率のよくないシステムなのか?直接エンジンで駆動することに比 べてこのような方式はロスだらけです。
充放電のロス、駆動系のロス、電池の自然放電、たくさんあります。でもハイブリッド自動車は一般 のガソリンエンジン自動車よりも排ガスが少なく、燃料消費率も低い効率のよいものばかりです。この謎を解くにはガソリンエンジンの特性を考えなくてはなりません。
ガソリンエンジンにはレシプロエンジンとロータリーエンジンがありますが、燃料であるガソリンを微粒子や気体にして空気と混合、圧縮、着火してその爆発エ ネルギーを回転力に変えています。1kgほどの燃料で1トンもある車を10km先まで移動させることができるエネルギー変換装置が自動車のエンジンです。
自動車が走るためには、様々な走行抵抗に打ち勝って進まなくてはなりませんから、動力が必要です。昔は「馬力」と呼んでいましたが、今はkWなどの単位 で示される、「出力」です。エネルギーの単位はkJあるいはよく用いられるkWhですが、出力は「力」なので、単位 時間当たりのエネルギー消費と同じものです。一般的な乗用車が時速100kmくらいで走りつづけるのにはおよそ20kWくらいの力が必要です。およそ30 馬力くらいは必要です。
ガソリンの爆発による力は回転力、すなわちトルクとして機械的に車輪に伝えられます。このトルクにエンジンの回転数をかけたものが出力になるのですが、ここにガソリンエンジンの特徴が表れています。
乗用車のエンジンは車が停止している状態では、およそ毎分1000回転(これをrpmと書きます)以下ですが、この時の回転力(トルク)はさほど大きくな く車を発進させるには十分ではありません。そこでトランスミッションと呼ばれる変速機構を用いて動力を伝えるのですが、このトルクは一定ではなくエンジン の回転数が増えると徐々に大きくなるのが普通 です。出力はトルク×回転数ですから、エンジンの回転数が上がれば出力はぐんぐん増大することになります。しかし回転数には機械的な上限や燃焼の効率があ るためいつまでも回転をあげ続ける訳にはいきません。
乗用車の場合、最大の出力はおよそ4000rpmから8000rpmの間にあります。F1だと18000rpmもありますが、エンジンを使える時間が全く異なるため同じように考えることはできません。
ガソリンエンジンは内燃機関ですから最も効率のより使用条件というのがありますが、これを自動車に使う場合、発進、加速、一定速度走行、減速などの様々な 条件となりますので、効率のよい場合よりも、むしろ効率の悪い場合の方が多くなってしまいます。これを補うためにトランスミッションやエンジンを工夫して より効率のより使用条件を作り出す研究や開発は行われていますが、やはり低回転から回転を上げながら加速する場合などに燃料をたくさん消費するのは、ガソ リンエンジンの特性上仕方のないことです。都会などで渋滞すると非常に高い燃費になってしまうのは、発進や停止を繰り返すことに原因があります。またガソ リンエンジンは始動する度に電池やガソリンを多く消費しますから、短時間なら車が動いていない時でもエンジンを止めない方がよいことがあります。渋滞中の 車のほとんどが動いていないのエンジンはまわったままです。これは大変な資源の無駄 遣いになっています。
一方、電気モーターは回転数が上昇するにつれてトルクが小さくなるという特性をもっています。出力=トルク×回転数ですから、モーターの場合は回転数を上 げていってもガソリンエンジンのような加速力は得られません。しかし、ゼロ回転、止まっている状態からいきなり動き出す瞬間でも非常に大きなトルクを出す ことができます。そのためにガソリンエンジンのようなクラッチ機構やトルクコンバータ、変速機構なしにいきなり車を発進させることもできます。もちろん実 際の自動車にはディファレンシャルギヤなどがついているためモーターの回転=車輪の回転とはなりませんが、それでもほぼ直結状態で使うことができます。プ リウスのモーターのトルクは400Nmもあります。これはガソリンエンジンで言えば5000ccくらいの排気量 の車に相当します。もちろんこのトルクを発生する回転数が全く異なるためガソリンエンジンと比較すること自体に意味はありませんが、とにかく非常に大きな トルクであることは間違いありません。

発進や低速走行の不得意なガソリンエンジンと低速回転を得意とする電気モーターをうまく使いわけることができれば、欠点を補うことによって、最初に述べた ロスを補ってより効率的なシステムとすることができます。もちろん新幹線のように時速250km以上で走行する電車がありますので、電気モーターが高速を 苦手としている訳ではないのですが、完全に電気モーターだけで走るという方式は、自動車という大きさや重さの制限の中ではまだあまり効率がよくありませ ん。そこで高速はエンジンに任せて、モーターは低速からの加速などに使うというハイブリッド方式が乗用車では効率のよいシステムを作ることが可能になって きます。
ハイブリッドシステムの問題点とこれから:
ハイブリッド自動車は前述のようにガソリンエンジンより優れた点があります。また電気自動車のように外から充電したりする必要がなく、従来のガソリンスタンドで燃料を補給するだけで走ることができますので、社会基盤整備という点でも非常に有利なシステムと言えます。
しかし実用化のためにはいくつもの問題点がありました。
まず、エンジン、モーター、電池などを1台の車に積むために車体が重くなります。これは省エネを考えた時に決定的に不利な要素になります。また車が重いと運動性能にも影響を与えますから少しもよいところがありません。重い車は環境に与える負荷も大きくなります。
次にこれらの部品を積むためにどうしても製造コストがかかります。いろいろな技術の進歩によって部品のコストは下がっていきますが、普通 の車にはついていない部品が多いため、必ず販売価格はガソリンエンジン車より高くなります。
また膨大な開発費がかかりますので、販売台数が少ない間はハイブリッド車にそのコストを分担させることができません。もし単独で採算を取ろうとすると全く 売れないような価格設定になってしまうからです。ガソリンエンジンの車はおよそ100年間の技術開発の歴史とをの技術的蓄積で現在の価格が達成されていま すが、多くの技術が新開発のハイブリッド車には、そのような長い年月の蓄積もありません。
仕掛けとしてのハイブリッドに数多くのメリットが見出せても、様々な技術の開発とそのコストの負担を考えると、これを市販車に採用するということは非常に 大変なことです。トヨタ自動車がプリウスを発売したのは1997年ですが、各社は既に30年くらいの開発を続けていました。
実験室やテストコースで実現できる技術と、その技術を持った車が普通の道路を普通に走ることのギャップは極めて大きいのです。
プリウスという名前は、「さきがけ」という意味を持ちます。初代のプリウスを作った人もこれを買った人も、本当は「先崖(先の方は見えない崖)」だったの かも知れません。しかしプリウスは初代だけで廃盤とはならず2003年にはフルモデルチェンジをすることになります。その前にはTHS-Cという全く異 なった方式のハイブリッドを大型バンにも採用して販売しています。
これからハイブリッド車が増えると考える人が多くなってきました。
ハイブリッド車の評判:
ハイブリッド自動車は、電池が持たないとか、非常に高価である、あるいはコンピュータが数多く採用されているので電磁波傷害があるとか、様々な誹謗中傷を 受けることがあります。そのほとんどが根拠のないものですが、販売台数が増えるにしたがってそのような論調も減ってきました。トヨタやホンダだけでなく各 社からハイブリッドカーが発売されるようになれば、このような風評はなくなるのではないでしょうか。
またせっかくの低燃費車もそれを製造するときの環境負荷をトータルで考えた場合、あまりよくないのではないかといった研究も行われ来ましたが、初代プリウ スなどが実際に売られて使用された結果 、トータルでも省エネ、省資源性能に優れていることが証明されて来ています。

一方、低速で走行する場合にエンジン音がないため歩行者などから気づかれにくいという大きな問題があります。交通 安全の観点からは大変な課題です。
これはハイブリッド車の問題と言うのではなく燃料電池車や電気自動車などが抱えるのと同じ問題です。運転者も歩行者もエンジン音のない車というものに慣れていません。
子供の頃からこのような交通環境で育っていれば、対処法なども考えやすいのでしょうが、現在の大人たち(耳が聞こえる健常者)では、動いている自動車から はエンジンの音が聞こえるのを当たり前だと思ってしまっています。体に染み付いた感覚ですから解決方法は簡単ではありません。
ホンダのIMA方式だと動いているときは必ずエンジン音がしますが、トヨタのTHS方式のように低速ではほとんどエンジンが止まっている場合は、電気自動 車と同じ感覚で取り扱わなければなりません。当分の間はハイブリッド自動車の運転者のモラルや注意力に頼らざるを得ないのかも知れません。

いまだにハイブリッド車は「高い」と思われています。確かに同じくらいの車と比べるとプリウスの場合で40万円ほど販売価格が高くなっています。これは四 輪駆動とカーナビゲーションシステムをあわせたくらいの価格といえます。一般 の車の場合でも(車の基本性能と関係ないような)オプションをつけていくと比較的簡単にこの「ハイブリッド差額」と同じくらいの価格上昇が起こります。し たがって、この価格を高いとみるか妥当とみるかは、買う側の感覚による違いの範囲に入っているのではないでしょうか。
もし100万円くらい高ければ、確かにハイブリッドシステムは高価すぎると言えると思いますが、現時点での価格差は非常にリーズナブルではないかと考えています。