2.1950年代 |
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この時代は、まだコンストラクターチャンピオンというものがありませんが、1950年は間違いなくAlfa Romeoの年です。
全く別の車と別のドライバーで競い合うインディ500レースをF1世界選手権に加えなければAlfa Romeo158が全戦全勝です。
1.5リッター直列8気筒エンジンなのでアルファ158と呼ばれます。
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新興のFerrariはFerrari125V型12気筒エンジンで対抗しますが、かなわないため、加給器をやめて排気量
を大きくする作戦に出ます。
いきなりエンジンを大きくできなかったためFerrari275、Ferrari340など色々な型番の車が登場しますが、いずれもエンジンの排気量
が車名です。
Ferrari375では375cc12気筒の合計が4500ccなので規定一杯の排気量です。
Alfa Romeoから独立したFerrariはまだワークスのAlfa Romeoには太刀打ちできなかっただろうと思います。 |
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1950年には英国のクーパーもグランプリに参加しています。
これはほとんどF3規定の車で出場しているのです勝負にはならないのですが、エンジンは運転席の後ろです。
JAP製のエンジンは空冷V型2気筒1100ccというToyotaパブリカのようなエンジンです。
(パプリカの登場は10年以上後で空冷水平対向2気筒800cc) |
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200馬力以上はあるだろうと思われるアルファにおそらく50馬力程度のクーパーでは勝負にはならないはずですが世界選手権1年目にはミッドシップカーが出場していたことと、空冷エンジンがあったことは記録に残るのではないかと思います。 またクーパーのようにエンジンを作らずに別のメーカーが作ったエンジンを搭載するというのもとても珍しいことでした。
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1951年には英国のBRMがエフワンカーを登場させます。
英国の産業復興のシンボル的存在になるはずのBRMでしたが実際のレースには出場していません。
1500ccスーパーチャージャー付エンジンはV型16気筒です。
Alfa Romeoも1938年にTipo316で3リッターV16エンジンを作っていますが、複雑なエンジンは信頼性や整備性では問題があるようです。 |
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シムカ/ゴルディーニ15はゴルディーニ製の直列4気筒1500ccエンジンです。 |
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同じフランスのタルボ-ラーゴT26Cはタルボ製4500cc直列6気筒エンジンです。
以前のような無茶苦茶なエンジンは見られなくなりましたが、それでも4気筒、6気筒、8気筒の直列エンジンから、12気筒、16気筒のV型エンジンまでこの時代のエンジンはバラエティにとんでいます。
2000年頃の全車V型10気筒3000ccエンジンという時代と比べるととても楽しそうです。 |
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1952年と1953年のF1グランプリはなんとF2規定で行われいます。出場車を増やすのには良かったのかも知れませんがエンジンも車も全てF2です。
F1世界選手権は始まってすぐにピンチです。何といっても世界選手権と言いながらイタリア車しか勝っていないのですから。 |
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この頃大活躍したFerrari500は500cc4気筒(合計2000cc)エンジン。
Japanの乗用車で言う5ナンバー規格のようなものです。プライベートチームから出場していたFerrari12気筒エンジン車もありましたが優秀なFerrari4気筒2000ccエンジンには太刀打ちできなかったようです。 シリンダーの数が多いほど速いとは限らないのです。 |
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1954年にはエンジンの規程が2500ccになり、加給器付エンジンは姿を消します。
1954年と1955年のグランプリを制覇したメルセデス/ベンツは50年、51年のアルファ同様直列8気筒エンジンです。 直列4気筒を2つ縦に並べた直列8気筒はとても珍しいように思いますが、アルファやメルセデスのように何度もチャンピオンを獲得した優秀なエンジンです。
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この頃のエンジンは直列エンジンが多く、V型はLanciaのV8エンジンだけです。 もうV型エンジンは旧式になってしまったのでしょうか?
メルセデスの優勝によって、イタリア車だけでなくドイツ車も優勝、チャンピオンも獲得。やっと世界選手権らしくなってきましたが、と言ってもまだヨーロッパ中心です。 |
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直列エンジンばかりのなかでユニークなのは
DBモノミル/パナールが搭載したパナール製水平対向2気筒エンジンです。
スーパーチャージャー付なのでたぶん750ccエンジンと思われます。世界選手権では唯一の前輪駆動車です。
あまり詳しい資料がなかったので色と形は想像で描いています。 |
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1956年も直列エンジンが多く、FerrariのみがV型8気筒エンジンです。 56年と57年にFerrariチームが使用した車とエンジンは撤退したLanciaのものです。 |
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57年登場のポルシェは空冷水平対向4気筒エンジンです。
基本形はフォルクスワーゲン/ビートルと同じです。 フォルクスワーゲンを設計したのがポルシェ博士なのでレーシングカーも同じ型式のエンジンを採用しています。 |
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1958年からはコンストラクタチャンピオンシップが始まり初代チャンピオンはイタリア車ではなく英国のヴァンウォールです。 |
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ヴァンウォールの直列4気筒エンジンの排気管は運転席の横を通
って後ろまで伸ばされていますが、FerrariやBRMやロータスなどフロントエンジン車の排気管がこのように配置されるのが流行です。 |
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同じ58年に登場したクーパーT45は、単にクーパーと呼ばれるのではなく、クーパー/クライマックスと呼ばれます。
エンジンメーカー=車体メーカー=チーム、というエフワンの従来の方式とは異なり、車体=クーパーカー社、エンジン=コベントリー・クライマックス社というように仕組みです。
クーパー以前にもコンノートがアルタエンジンを搭載していましたが、コンストラクタチャンピオンシップが始まったこの年にコンストラクタとはどんなものかが決まったようです。 |
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コンノート/アルタという言い方はしないようですが、クーパーの場合は、クーパー/クライマックスが正式なコンストラクタとなります。 この年にはロータス/クライマックスも登場していますので、エフワンエンジンメーカーという考え方が始まった年になるのかも知れません。
もしシーズン途中でエンジンメーカー(エンジンマニュファクチャラ)を変えた場合は、コンストラクタが変わってしまうためポイントは別
々になります。
後年、McLaren/Hondaとかウィリアムズ/ルノーといった言い方が普通になりますが、エフワンでこのような呼び方が始まったのは、クーパー/クライマックスとロータス/クライマックスの頃からです。
それまではドライバーだけの世界選手権だったものが、コンストラクターの競争という考えが始まった58年は歴史的な年になりました。
また、クーパーT45は自社製でないエンジンを積んだだけでなく搭載位置が運転席後ろ、いわゆるミッドシップレイアウトを本格的に採用した点も画期的です。
重いエンジンを重心位置に搭載して運動性能を良くするのがねらいです。
また他車が2500ccエンジンなのにやや小さめの2200ccエンジンを搭載しています。
翌59年と60年にはクーパー/クライマックスがグランプリを席捲し連続チャンピオンに輝きます。
エフワンは強力なエンジンだけで勝つ時代ではなくなったことを示したのがクーパーです。
クーパーの活躍はそれまでのF1を大きく変えてしまいます。 |