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新・漫画ガスの話 229

作成日2021/03/10 更新日2022/05/16 コメント2023/02/03
23 ガスの化学/同位体の話 SI事業(安定同位体ビジネス)

SI事業と言えば1990年頃から盛んになったシステム・インテグレーション業界を思い浮かべます。知らない人の方が多いと思いますが、安定同位体を取り扱うビジネスもSI事業(ステイブル・アイソトープ・ビジネス)と言います。
放射性物質のビジネスは法令で厳しく規制され、流通経路も限定されますが、安定同位体は一般の物質と同じビジネスです。しかし安定同位体を「製造あるいは購入」「品質管理」「販売」することは一般の物質とは異なることが多くあります。安定同位体ビジネスの最初の難関は同位体を濃縮すること(同位体分離)です。安定同位体ビジネスの特徴を大雑把にあげると、「同位体分離は非常に難しい」「販売量が非常に少ない」「同位体の分離には大きな装置と時間が必要」というものがあります。特に分離の難しく装置が巨大となり製造に時間がかかることから、力まかせの方法ではビジネスが成立しません。
酸素同位体である酸素18の利用例を示します。1960〜1970年代にフッ素18を用いたFDGの合成と、これを利用したFDG-PET診断法が開発されました。フッ素18はβ崩壊して陽電子を放出します。陽電子は反粒子(反物質)なので我々の宇宙では長く存在することはできません。陽電子から見ると周囲は反粒子である電子であふれているからです。陽電子-電子の対消滅(ついしょうめつ、アナイアレーション)によって陽電子はエネルギーに戻ります。その時のエネルギー(ガンマ線)をとらえるガンマカメラによってPET診断(ポジトロン・エミッション・トモグラフィー)が行われます。

フッ素18の半減期はおよそ110分なので長期保存はできません。安定同位体である酸素18を用意して、使用する直前にこれをフッ素18に転換させて使用します。