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別冊 「マスク・フィルターの科学」H

空気中のゴミの大きさはフィルトレーションにとって重要ですが、大きさだけでフィルトレーションが決まる訳ではありません。
COVID-19のパンデミックが起った当初、マスクは隙間だらけなのでウィルスは全部通過するという情報が広まったことがあります。これは「篩・ふるい」と「ろ過・フィルトレーション」を同じものだと勘違いしたためではないかと思います。関連学会や専門家からは、小さな粒子はむしろマスクに捕らえられやすいというメッセージを発信されました。

篩は異なる大きさの固体(粉末など)をその大きさで分ける仕組みです。砂や小麦粉のような粉末を規則的な網目のあいた篩を使って篩い分けることは、粉の大きさで決まります。網目よりも小さな粉は重力(プラス振動)で下に落ちていきます。
一方、マスクは、空気だけを通し、不純物を捕まえればよいのですが、空気分子とゴミや埃、ウィルスの大きさは極端に異なります。したがって、分子の大きさに近い孔をあければ、空気だけを通してゴミやウィルスを全部通さないという篩が作れるかも知れません。しかしいくつかの理由によって、そんな篩の機能を持つマスクをつくることはできません。
まず、空気の分子は時速2000キロメートルに近い速さ(二乗平均速度の平方)で動き回っています。どんなに偶然が重なっても空気分子だけが孔を通過することはありません。
私たちが生活している地球の気温は、270ケルビン(約0℃)から300ケルビン(約30℃)、寒い、暑いはあっても気温は3桁の温度から外れることはありません。そのような状態ではガスの分子はこのくらいの速度で飛び交っています。温度とは分子の運動そのものなので、分子がゆるゆると動く状態は温度が2桁から1桁まで低下しなければ起こりません。絶対零度でも粒子の振動を止めることはできません。

さらに、大気圧の空気分子はバラバラの粒子ではなく「流体」として振る舞います。分子よりもはるかに大きな隙間がないと空気は流れません。