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第25回 4章 ガスの科学と物質の階層構造

 2017/11/18

 4−6 時間の階層

修正2018/12/05

 4−6−3 地球46億年の歴史(2)大気の歴史・空気の歴史

 

(2)大気の歴史・空気の歴史
  地球の大気は、地球創生記からある訳ではなく、その構造や組成も、46億年という地球の歴史の中で大きく変わってきたものである。大気の主要な部分を占める空気の組成も初めから今のようなものであった訳ではなく、今後も同じということはない。しかし、わずか300万年ほどの人類の歴史の長さでみると、それほど大きな変化はしておらず、人類は、当たり前のように存在する現在の空気に適応するように進化してきた。
   太陽や太陽系の惑星などは、宇宙空間のほぼ同じ領域に存在した分子雲、すなわち宇宙に漂うチリとガスを原料として作られた。この場合、チリとは主に固体、ガスとは気体あるいは液体のようなものであり、前時代の恒星の残骸や超新星爆発合成されて宇宙にばらまかれた元素が、分子雲の正体である。
 太陽系の天体は、同じ物質の起源を持ち、似たような元素で作られ、それぞれが星の成り立ちに応じた大気(星を取り巻く気体のかたまり)を持っている。
  太陽は太陽系唯一の恒星であり、太陽の大気だけは他の惑星とは異なり特別である。太陽大気にはほぼ全ての元素が存在するが、圧倒的に多いのが水素とヘリウムである。星の中心部で起こる核融合反応は太陽のエネルギー源であり、その光と熱が星の表面に現れて、明るく輝く星となる。
 惑星は、それぞれの軌道(太陽からの距離)に応じて、「岩石惑星」「ガス惑星」の二種類のグループに分けられるが、地球のような岩石惑星(地球型惑星)は、似たような元素からなる大気を持っている。ただし、それぞれの惑星は、大きさ、太陽からの距離、惑星がたどってきた歴史などによって、その組成は大きく異なっている。
   表に太陽系の地球型惑星(岩石惑星)の大気組成を示す。
 水素は、拡散しやすく、質量が小さい地球型惑星の重力では留めておくことができない。大気に含まれる水素は、宇宙空間に逃げてしまい、ほとんど残らない。大気圧そのものが極端に小さい水星を例外として、岩石惑星の大気中の水素の濃度は非常に低い。そのため、惑星表面の鉱物は酸素によって酸化され、表面は錆びた「赤い惑星」となる。
 水星の大気が特殊なのは、太陽に極めて近く、太陽の熱や重力による大きな影響を受けているためであるが、岩石惑星の基本的な大気は、二酸化炭素と窒素である。
 

地球型惑星の大気組成(%)と物理的性質

 

水星

金星

地球

火星

大気圧 kPa

0.1×10-6

9,300

101

0.9

成分%

 

 

 

 

水素

22

 

0.5ppm

 

ヘリウム

6

12ppm

5.2ppm

 

酸素

42

 

20.95

0.13

窒素

 

3.5

78.02

2.7

CO2

 

96.5

0.038

95.32

Ar

 

70ppm

0.930

1.6

Ne

 

7ppm

18ppm

2.5ppm

H2O

 

0.002

1.0

0.03

Na

29

 

 

 

表面温度(高/低)K

700/90

733/228

333/184

293/133

平均温度 K

440

737

288

210

自転周期(地球時間)

58日

243日

1日

1.03日

公転周期(地球時間)

88日

0.615年

1年

1.88年

水星の最低温度は夜間、金星の最低温度は大気上層部、地球の温度幅は地域、季節によって大きく異なる。

    金星の大気中の二酸化炭素濃度は96%、火星の二酸化炭素濃度は95%である。金星と火星の大気圧は大きく異なるが、組成(二酸化炭素と窒素)はよく似ており、これが岩石惑星の標準的な大気組成だと考えられている。
    創世記の地球の大気も他の岩石惑星と同様の組成であったと推定されている。特に、金星と地球は質量(重力)が同程度であるため、ふたつの惑星の大気の量(大気圧)や組成は、ほぼ同じようなもの、現在の金星と似たようなものであったと推測されている。
  しかし、太陽系内の惑星の中でも最も大きな変化(進化)を続けてきた地球の大気の組成は、他の惑星とは異なる独特のものになっている。地球の大気には酸素が含まれているのである。
   大気中の 酸素は惑星表面の金属を酸化させて鉱物にしてしまうため、通常は大気中には酸素は残らない。しかし地球には、海と生命が誕生し、他の惑星とは、大きく異なる歴史をたどることになった。
 地球は大量の液体の水(海)を保有し、そのなかから生まれた生命体が作りだす酸素が全惑星的な大きな循環を作り出し、特殊な環境が生まれた。地球の大気からは、原始の二酸化炭素が激減、代わりに高濃度の酸素が発生することになった。
  生物は星の大きさに比べると、ごくわずかな領域でわずかな量が生態系をなしているに過ぎない。しかし生物による炭素や酸素の循環は、星そのものの環境を変えてしまうほど大きいものである。
   現在の金星の大気圧は地球の90倍以上、二酸化炭素の量は、2500倍もある。金星は、地球よりも太陽に近いが、全体が厚い雲に覆われているため太陽からの入射エネルギーは地球よりも小さい。しかし表に示すように金星の表面温度は非常に高い。これは金星大気の二酸化炭素による温室効果の結果である。スヴァンテ・アレニウス(18591927年、スウェーデン)は、金星の大気から惑星の温暖化を研究、これを理解することによって、地球の温室効果や氷河期を説明、二酸化炭素の量が地表面温度に影響を与えることを示した(1896年)。
  100年以上も前から、金星の調査・研究によって、惑星の温暖化現象すなわち温室効果ガスによる熱暴走のメカニズムが提唱されている。
   図に地球の大気の変遷を示す。地球の大気の歴史については、全てが明らかになっている訳ではないが、地学の教科書には、およそ図のような変化が示されている。(国立環境研究所の環境展望台・環境学習HPなどに詳しい解説がある)
 グラフの上は、大気の組成を圧力(分圧、対数目盛)で示し、下のグラフは、時間軸を拡大し、直近6億年の大気中の酸素の濃度と二酸化炭素の濃度を現在の濃度を1とした相対濃度で示している。
 「地質時代」は、冥王代、始生代(太古代)、原生代と進み、顕生代となって、本格的な生物の時代がおとずれる。
  顕生代(けんせいだい)とは、「肉眼で見える大きさの生物が生息する時代」という意味であり、現在から54200万年前に始まり、現代につながっている。地球の歴史は46億年であるが、微生物を除く古生物学は、5億年ほど前から始まる。
原始の地球:
  月の石を研究したロバート・ヘイゼンによる地球の歴史ガイドブックが非常に詳しく地球の歴史を説明している。ロバート・ヘイゼン著、円城寺守監訳、渡会圭子訳 「地球進化46億年の物語・青い惑星はいかにしてできたのか」 講談社ブルーバックスB-1865、2014年。お薦めである。
 地球史の本には、イラストなどの挿絵が多いが、本書は、ほとんど文字だけで伝える解説書であり、絵が少ない分、想像力を働かせて地球の歴史を考えることができる。地球と月の誕生の話から、地球物理と地球化学、海洋や大気の変遷について分かりやすく解説されている。大気については、酸素と二酸化炭素の変遷が詳しく示されているが、窒素とアルゴンについては記述が少ないため、空気の歴史を学ぶには、他の資料も必要である。
   原始の地球(原始惑星のジャイアント・インパクトによって地球と月が創世した後の地球)には、水素とヘリウムの原始大気があり、これが宇宙空間に散逸した後に、高温高圧の水蒸気の大気ができた。
   原始地球の表面は、数多くの微惑星の衝突によって高温のマグマオーシャンとなっていたが、やがて微惑星の数が減り、地球と微惑星との衝突は激減し、地球は冷え始めた。大気を覆っていた水蒸気の液化が起こり、液体の水(高温高圧の液体の水)が現れ、地表面を冷やし始め、「海」が誕生した(ヘイゼンによる「第4章青い地球」)。水蒸気の大気ではなく、二酸化炭素と窒素を主成分とする大気が出現した。上のグラフの左端は、この最初の大気の組成を表しており、二酸化炭素が90%、窒素が10%、圧力は現在の10倍ほどである。
   大気中の二酸化炭素が激減した地球では、太陽からの強い紫外線によって水蒸気が分解、酸素が発生した。しかし発生した酸素は、全て地球表面の金属の酸化に消費され、水素は地球外へと拡散していった。大気中に酸素は残らなかった。
 40億年前の地球は、二酸化炭素の激減によって大気圧が大きく低下、窒素と二酸化炭素に加えてわずかに増え始めたアルゴンからなる大気組成となった(図の冥王代から始生代)。
   
酸素の発生、しかし大気中には酸素は残らない
    続いて、水中に生命(シアノバクテリア)が登場し、光合成が始まった。
 27億年前にシアノバクテリア(藍色細菌)が大量に発生、光合成によって消費された大気中の二酸化炭素は、さらに減少した。
  地球は、誕生からわずか6億年後には、初めの生命が誕生しており、46億年の歴史のほとんどは、生命とともにある。光合成によって発生した酸素は、水中や地表面(火山活動などによってできはじめた陸地)の鉄を酸化して消費されるため、この時点でも、まだ酸素は大気中には現れてこない。紫外線によって発生した酸素も、生物によって作り出された酸素も、いずれも地球を錆びさせるために消費されてしまい大気中には酸素は残らなかった。
    地球は、何度も「大酸化イベント」を経験する(ヘイゼン「第7章赤い地球」)。
  かつて地球規模の大酸化が起こった証拠のひとつとして、それ以前の時代の岩石に含まれる試料を採取、空気中に取り出すとすぐに金属が酸化して壊れてしまう、ということがある。その時代の鉱物は酸化されておらず、大気には酸素がなかったことが分かる。
   やがて一瞬にして劇的な変化(イベント)が起こることのない時代が来る(ヘイゼン「第8章退屈な10億年」)。ここで、地球規模のイベントがないというは、数千年程度の非常に短い期間での劇的な変化がないという意味であり、地球史的には、変化が乏しい退屈な時代とされるが、ゆっくりではあるが非常に大きな変化が起こっている時代である。この時代の地球上の鉱物には多くの変化が現れ、巨大大陸が登場、分裂、移動が起こる。
   大陸間海洋は大きく変化し、海水中の酸素は、全ての鉄イオンを酸化し、縞状鉄鉱床(Banded Iron Formation、BIF)を形成した。BIFは、顕生代以前(先カンブリア紀)に海底に堆積した酸化鉄の堆積鉱床であり、38億年前〜19億年前の年代の地層から鉄鉱石が産出している。現在、採掘される鉄鉱石の大半がこの時に作られたものである。それ以降の時代には、BIFは形成されておらず、地球表面の鉄はこの時に全て酸化された。
酸素の大気中への放出と酸素濃度の上昇
    その後、鉄を全て酸化し海水中で飽和になった酸素の大気中への放出が始まり、大気中の酸素濃度が急激に上昇し、酸素、アルゴン、二酸化炭素の濃度がほとんど同じになった。(20億年前)
  二酸化炭素の減少は、さらに続き、アルゴンの増加も続くが、酸素の増加がアルゴンの増加を上回り、酸素は窒素に次ぐ成分になっていく。大気中の酸素が増え、オゾンが発生することによって太陽からの紫外線が遮られ、徐々に陸上生物が生息可能な環境ができてくるが、まだ酸素濃度が低いため、オゾンは地表付近にある。酸素がない時代に生きた生物からみると猛毒である酸素やオゾンが地球を覆い始める。
    7億年ほど前から、スノーボールアースとホットハウス・アースと呼ばれる全球凍結と温暖化のサイクルの繰り返しが始まる(ヘイゼン「第9章白い地球」)。
  スノーボールアース仮説は、20世紀末に提唱された新しい仮説である。それまでの定説は、スノーボールアースはなかったというもので、『もし地球の水が全て氷る全球凍結が起こると、太陽光線を反射し、熱を吸収しなくなり、「正のフィードバック」が働いてしまい、地球は凍結からは抜け出せなくなるが、現在、地球に海が存在するということは、これまでには、全球凍結が一度もなかった』というものであった。
  新たなスノーボールアース仮説では、火山活動による温暖化ガスの蓄積などによって全球凍結からの脱出が可能と考えており、全球凍結と温暖化のサイクルによって生物の大量絶滅と急速な進化が繰り返され、酸素呼吸をする生物や多細胞生物が出現したというものである。
オゾンの上昇とオゾン層の形成
    4億年前に、酸素濃度の上昇によって、地表付近にあったオゾンが押し上げられ、上空にオゾン層(ozonoshpereまたはozone layer)が形成された。オゾン層は、太陽からの有害な波長を持つ紫外線の多くを吸収し、地上の生態系を保護するようになった。
  太陽圏内の天体は、太陽からの強力で危険な放射線に曝されているが、大気とオゾン層の形成によって地球表面は生物にとって安全な場所となっていった。現在のオゾン層は、成層圏に多く存在し、特に高度20〜25kmのところで濃くなっている。
    レイリー卿(ジョン・ウィリアム・ストラット)は、下層大気では、紫外線が遮閉されないことを発見し、紫外線の多くは、高層大気で遮閉されていることを発見した(1913年)。
 ゴードン・ドブソン(1889〜1976年、英国)は、隕石の研究から対流圏と成層圏の界面付近で急激な温度上昇があることを発見し、その理由を、紫外線とオゾンの反応によるものとして、オゾン層の存在を証明した(1920年)。
    現在、オゾン層のオゾンの量は、「ドブソン単位(D.U.)」、0℃、1atmに換算した時のオゾン層の厚さとして示されるようになっている。たとえば、300D.U.とは、地表1atm3mmのオゾンの層があることに相当し、上空のオゾン層が、220D.U.以下の状態となれば「オゾンホール」が発生しているとされる。
  化学物質としてのオゾンが発見されたのは1839年と古いが、大気中にオゾン層があることが発見されてからはまだ100年もたっていない。オゾン層で最も濃度が高い部分のオゾン濃度は10ppm程度。オゾンは強い酸化作用が産業利用されているが、毒性ガスであるため、多くの国では作業環境基準を0.05〜0.1ppm以下としている。
    誕生期から対数グラフ上で直線状に激減してきた二酸化炭素は、6億年前くらいには、大気の主成分ではなく微量成分となった。図の下のグラフには、直近6億年を拡大した二酸化炭素の変遷を示しているが、何度も二酸化炭素の増加減少が繰返えされ、この間に、温暖化と寒冷化も繰返えされている。温暖化・寒冷化に関わる因子としては、水蒸気と二酸化炭素の影響が大きいと考えられている。また、メタンハイドレートから突然噴き出すメタンも大きく影響したと考えられている。現在、メタンハイドレートが海底や永久凍土など、様々なところで発見されているが、メタンの温暖化係数は非常に大きいため、もし、メタンハイドレートから大量のメタンが放出されると、極めて大きな気候変動が起こると考えられる。
   顕生代を細かくみると、古い方から、古生代(カンブリア紀、デボン紀、石炭紀など6分類)、中生代(三畳紀、ジュラ紀、白亜紀)、新生代(古第三紀、新第三紀、第四紀)となっている。顕生代のはじめは、まだ現在のような酸素濃度にはなっていないが、主成分は現在と同じ、窒素、酸素、アルゴンの順となっており、大気圧も同程度である。
   顕生代以降も気温は大きく変化しており温暖期と寒冷期を繰り返しているが、この間に二酸化炭素の濃度も非常に大きく変化している。
  現在の大気中の二酸化炭素濃度は300〜400ppmと非常に低いが、過去6億年間の二酸化炭素濃度は現在の数倍から15倍程度と高く、この間の植物の光合成と大気中の高い酸素濃度が関係していると考えられている。
    生物は大絶滅(ほとんどの種が絶滅するイベント)を何度か繰り返しているが、最も大きいものは約2億5千万年前、生物の95%が地球上から消えたとされている。ヘイゼンの解説では、その原因は今も研究中とされているが、NHKが作ったテレビの特集番組「地球大進化〜46億年・人類への旅(2003年)」では、次のように説明している。(ひとつの仮説なのか既に定説となっているのかはっきりしないが、放送ではほぼ断定的な解説をしている)
   『 地球の核からマントルにかけて起こったスーパープルームによって地表面に直径1000kmほどの溶岩が噴出、地殻中にあった大量のメタンハイドレートが大気中に噴出、莫大な量の温暖化ガスの噴出によって気温は50℃以上も上昇、メタンは空気中の酸素と反応して、それまで30%以上もあった酸素濃度は急激に低下、高温、低酸素となった地球環境の急変によってほとんどの生物が絶滅したという。図でも酸素濃度がいきなり低下、二酸化炭素濃度が上昇している。スーパープルームを説明するプルームテクトニクスは1990年代に日本の研究者が提唱した地球物理学の学説である。』
    顕生代・新生代・第四紀は、今から2588000年前に始まり(人類の祖先はおよそ200万年前に出現)、そのうち最も新しい「完新世」が今から11,700年前に始まり、1万年後に最終氷期が終わり、現代に至っている。(右のグラフの右端であるため、ほとんど表示されない)。なお、完新世の開始は、第四紀学会によってグリーンランドの氷床で定義されており、酸素同位体比などから判別できるという。
    地球は、非常に活発に変化する生きた惑星であり、顕生代に入ってもなお大陸は分裂・移動を続けており、大きな地殻変動、気候変動が繰り返されている。
 近年、議論されている地球の温暖化や寒冷化、急激な気候変動は、これまでの地球の歴史からみると極めてわずかな変化であり、観測期間も非常に短いため、その解析や今後の予測には大規模なコンピュータシミュレーションが行われている。過去に何度もあった大きな環境変化が起これば、人類の文明の持続可能性や存続が危うくなるため、社会的には地球温暖化や寒冷化の影響は非常に大きいと考えられている。「人為的なものに起因する気候の変動」が研究されている。
    気候モデルや地球温暖化に関する報告書、IPCC評価報告書が発行されているが、あまりにも複雑で素人には簡単には理解ができない。地球の温暖化、寒冷化に最も大きな影響を与えているのは太陽であるが、太陽の活動は一定しておらず100年単位や1000年単位の周期での変動も起こっている。
  次に影響が大きいのは海洋であり、水蒸気は最も大きな温室効果ガスであるが、雲の発生は寒冷化の原因にもなり得る。メタンハイドレート、火山ガス、二酸化炭素などの温室効果ガスの影響も重要である。様々な要因が絡み合っている複雑な問題を解くために世界から多くの研究者が集まって、議論が行われている。
   気圏、水圏、地圏における大きな物質と熱の循環が、地球環境(気候変動)に大きな影響をおよぼしており、その詳細なメカニズムの研究が待たれる。
   酸素の製造のための空気分離プロセスを考える時に、原料空気中に含まれるアルゴンの濃度は、非常に重要な因子である。しかし、地球史の教科書にはアルゴンの起源・変遷についてはほとんど記述がない。地球の大気の歴史の主役は、もっぱら酸素と二酸化炭素である。多くの書籍では、ここに示したように酸素と二酸化炭素の関係から大気(空気)を説明しているが、創世期よりずっと変化していない窒素と、最初からずっと増え続けているアルゴンについては、ほとんど触れられることがない。もし説明があるとしても、「アルゴンはカリウムの一部が変化した」との記述にとどまることが多い。