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第35回 2−4 希ガスの科学(2)
 2017/12/25
    2−4−3 アルゴンの起源  

 地球の大気の変遷を示す図からは、空気中にアルゴンが増え続けていることが読み取れる。
大気と空気C空気の歴史
 
    地球を構成する元素には、太陽系が誕生した時から地球に存在する原始地球由来の元素と、他の元素の崩壊によって新たに生成された元素の2通りのものがある。大気中に途中から増えた酸素は元々地球にあった元素、アルゴンはあとからできた元素である。

(1)地球創世記から存在する元素

    酸素や窒素、鉄や珪素などは、創世記から地球にある原始の元素である。
  宇宙の平均的な組成は大半が未知の物質(ダークマターとダークエネルギー)であり、現在の科学で明らかになっている「物質」は、およそ4%とされている。我々が知っている物質は宇宙の200分の1にすぎないが、その物質の大半が水素とヘリウムであり、その他の元素は「極めて希少な元素」である。
  しかし、地球のような岩石惑星の組成は、その極めて希少な元素からできており、宇宙の平均からは大きく外れている。地球の「自然」は、宇宙の自然からみると。とても不自然で例外的な元素の組み合わせによって作られている。
  地球を作った元素の起源はおそらく、このあたり(太陽系があるあたり)に漂っていたであろう分子雲のガスとチリ(固体)であり、その元素の起源は、もっと大昔に存在していた恒星が星の進化を終えて超新星爆発したあとの残骸である。
    人間が元素を合成することは不可能である。
  人工の核融合反応や人工元素合成があると考える人もいると思うが、実質的には不可能である。
  よく知られているように質量とエネルギーの間には E=mc2 の関係があり、ほんのわずかな物質を作り出すためにも莫大な量のエネルギーが必要である。
 この式から、1kgの物質と等価なエネルギーは 8.99×1016J と計算され、よく知られているエネルギーの単位に換算すると、約2.5×1010kWh に相当する。仮に、1軒の家が消費する電力量を250kWh/月とし日本には5千万世帯あるとすると、全世帯の2ヶ月分の電力に相当する。日本中の一般世帯全ての2ヶ月分の電気エネルギーから得られる物質は、わずか1kgしかないということである。エネルギーから物質を作り出すというのは桁外れに大変なことである。
  高エネルギーの装置を用いた研究では、人工元素(超重元素)を極々微量、作り出すことは可能である。しかしこれは、とても、使える量としての物質を合成することではない。人間は、酸素や窒素や炭素、鉄やアルミニウムなどの元素を合成することはできないということである。鉄や酸素を製造するということは、自然界(地球表面上)の資源を利用して、製錬や分離によって必要な元素を取り出すということである。
    自然界にはおよそ100種類の元素が存在するが、これを作り出したのは恒星である。宇宙創世記に最初に作られた原子は水素であり、最初の反応でヘリウムが作られたが、その他の元素は元素工場である恒星の中で核融合反応によって作られている。しかし、通常の核融合反応で作ることができる元素は「鉄(原子番号は26)」までである。
  核融合が発熱反応である(核融合の前と後ではわずかに質量欠損があり、これが熱エネルギとして放出される)場合は、核融合反応の条件が揃えば、自発的に核融合が進むが、鉄よりも重い元素を作ろうとすると、吸熱反応となるため、今度は莫大な量のエネルギーの供給が必要となる。理論的には自発的な元素合成は、ここで止まってしまい、恒星の元素工場では鉄より重い元素を合成することはできないということになる。
    しかし、地球上には鉄よりも重い元素が存在し、ウラン(原子番号は92)やトリウムなどの重元素が存在する。これらの重い元素は、恒星の元素合成(核融合)ではなく、超新星爆発に伴う莫大なエネルギーによって合成されたものと考えられている。(1954年にフレッド・ホイルによって提唱された「超新星元素合成 Supernova nucleosynthesis」)
  そうして、宇宙空間には、水素とヘリウムだけでなく、その他の元素が極めて希少ではあるが、ばらまかれて漂うことになる。これが分子雲であり。地球からは暗黒星雲(実際は星雲ではなくガス雲)として観測され、「星のゆりかご」とも呼ばれている。太陽もそうした分子雲のひとつから作られたいくつもの恒星のひとつであり、太陽系の惑星も、ほぼ同じ時代に同じ原料から作られた。
  現在、太陽や地球にある重い元素は、太陽で作られたのではなく、太陽よりも前の世代の星が作り出したものである。
   太陽と太陽系の他の星の原材料は同じものであるが、恒星である太陽の主成分は水素とヘリウムである。太陽系の惑星の組成は太陽とは異なり、惑星が形成された軌道(太陽からの距離)によって集まったガスやチリの組成が異なっている。太陽に近いところでは、岩石を中心とした地球型惑星(水星、金星、地球、火星)、太陽から遠いところでは、ガス体の惑星(木星型惑星)、氷の惑星(天王星型惑星)が作られている。
  地球の構造は、固体の鉄からなる内核(コア)、その上には液体金属の外核、その上にはケイ素などを主成分とするマントル、表面には、地殻と海洋と大気が形成されている。
  地球の深部は、未だに高温のままであり、地球は生きた惑星である。
    人間の存在と比較すると、地球はあまりも大きい。海洋底や地底は現在の科学であっても未知の部分が多い。人間は、表面のごく浅い部分を資源利用しているに過ぎないが、それでも分かっていないことがあまりにも多い。
  しかし、大気についてはかなり多くのことが研究されており、起源については、多くのことが分かってきている。図に示すように、大気中の二酸化炭素が急激に減少し、酸素が増加、窒素はほとんど変化していないといった、大気の歴史が知られるようになった。
  ただし、現在の科学で分かるのは、太古の昔からの数百万年から数千万年単位の時間軸における大まかな大気の組成の変化である。数百年から数十年といった短期間の気温や水温の変化、あるいは空気中の二酸化炭素濃度の変化などを数℃や数ppmのオーダーで予測するのは極めて難しい。詳細な記録といっても数千年や数万年も前からある訳ではなく、何と言っても、科学が哲学や錬金術から別れたのが17世紀、温度が発明されたのが19世紀である。人間の科学の歴史は非常に短く、小さな気候変動を予測できるようになるには、高度な科学の進歩と詳細な観測が望まれる。
(2)創世記のものではない地球の希ガス
   創世記にあった希ガスのほとんど残っていない。地球上に存在する希ガスの大半は、親物質の崩壊によって作られた放射性同位体起源の原子、あるいは宇宙線と空気の反応によって生成された原子核反応の原子からなる元素、すなわち、あとから作られた元素である。
  希ガスは、極めて化合物を作りにくい元素であるため、酸素や窒素、炭素などのように化合物として地殻や海洋中に資源としてとどまることができない。地球創世記にあった「非放射性同位体起源の希ガス」は、宇宙へ拡散してしまい、わずかしか残っていない。
  地球ができた後から生成した「放射性同位体起源の希ガス」も、宇宙空間に散逸するが、地球に二酸化炭素と窒素を主成分とする大気が形成されてからは、大気(主に空気)の成分として地球に留まることができた。
  レアメタルやレアアース(希土類元素、rare earth elements、REE)には、本当に希少なものもあるが、実際は大量に存在するのに、手に入りにくいもの、製錬が難しいもの、あるいは生産地が極端に偏っているなどの理由で「レア」と呼ばれるものがある。これに対して、希ガスは、地層中や海洋中に化合物資源としては存在せず、空気中にも単原子分子としてわずかに存在するため、文字通り「希」な元素である。(※レアメタルは和製英語であって、英語では minor metal
 現在の空気中の希ガスの濃度は安定しており、ヘリウム5.24ppm、ネオン18.1ppm、クリプトン1.14ppm、キセノン87ppbとなっている。どこで測ってもほとんど違いがない。アルゴンを除くとネオンが最も多いが、それでもわずか18ppmしかない。ラドン(86番元素)も空気成分であるが、濃度が安定しておらず、安定同位体が存在しないため空気の成分表には表記されない。
(3)異常に多い、空気中のアルゴン
   アルゴンは、希ガスとしては例外的に高い濃度で存在している。
  レイリーは、空気中の窒素の密度の異常に気付き、アルゴンを発見したが、当時の実験技術、測定技術では、79%も存在する窒素(当時の組成、現在は78%)の中に埋もれた0.93%のアルゴンを重さの違いから見出すのは容易ではなかった。しかし、現在では、誰もが空気中に大量のアルゴンが存在することを知っており、1ppm以下の不純物を測定すること通常業務としているガスの分析現場では、空気中の濃度が9300ppmもあるアルゴンの分析は容易である。
   空気中のアルゴンの濃度が異常に高い理由は、アルゴンの起源にある。アルゴンの親物質の量が、他の希ガスの親物質に比べて莫大であるため、空気中に濃度の高いアルゴンが生まれた。しかし、これを詳しく解説する教科書は少ない。地球の歴史を非常に詳しく解説しているRヘイゼンの本でも、なぜかアルゴンの記述はわずかである。
   地球のアルゴンの起源については、複数の学説があるとか、未解決の問題があるといったことはない。すでにアルゴンの生成機構や歴史ははっきりとしている。教科書にも書かれており、たとえば、地球年代学(geochronology)の分野では、アルゴンの生成機構は最もポピュラーな年代測定方法のひとつであり、詳細な測定方法などが記されている。
  しかし、一般には、あまり興味を引かないのか、その他の分野、たとえば、地質や空気に関する書籍であっても、あまり詳しく取り上げられることがない。空気を解説する書籍やガス分離のテキストにも、アルゴンの起源については、詳しく書かれないことも多い。アルゴンを利用している業界やアルゴンを商材として取り扱っている業界でも、アルゴンの起源を理解していないという人も少なくない。
(4)異常に重い地球のアルゴン
    同じ原子番号を持つ物質(元素)のうち、異なる質量数を持つものを「同位体(isotope)」と呼び、自然界におけるその割合を「同位体の天然存在比」(natural abundance ratio)と呼ぶ。ここで、天然とは「地球上」という意味であり、一般的には地球の表層部の自然界のこと指している。
  同位体の存在比は、場所によって異なるため、天然存在比の値は、地球の地表面近くの平均値が採用される。したがって、元素の同位体存在比は、他の場所、たとえば地球の極地や深部では、天然存在比とは異なることがある。また、元素の起源が異なる他の天体では、同位体存在比が地球のものとは全く異なるのが普通であり、もし似ているとしたら、原材料の組成が近いということが考えられる。したがって、同位体の存在比や天然存在比は、地球化学や天体の研究にとって極めて重要な情報となっている。アルゴンの起源を考える時にも、アルゴンの天然存在比が重要な情報となる。
   ここで、原子番号が20のカルシウムよりも原子番号が小さい元素の原子には、原子番号の2倍の質量数を持つ同位体、すなわち原子核中の陽子と中性子の数が等しい同位体の存在比が大きいという、一般的な性質がある。
 
  14の同位体14N、原子番号8の酸素は、質量数16の同位体16Oの存在比が大きい。この関係が、原子番号20のカルシウム、40Caまで続き、原子番号21のスカンジウムよりも原子番号が大きい元素では、原子核中の中性子数が陽子数よりも多い中性子過剰核を持つ同位体の存在比が大きくなる。
  元素の原子量は、同位体の質量数とその天然存在比から決まるので、軽い元素の原子量は原子番号の約2倍、重い元素の原子量は原子番号の2倍より大きくなる傾向がある。軽元素の原子番号と原子量の関係をグラフに示す。多くの元素が原子番号の2倍の原子量を持っていることが分かる(図中の直線が原子番号の2倍の質量数の線)。
 この中で、水素、リチウム、ベリリウム、アルゴンの4つの元素の原子量がこの傾向から大きく外れている。
   原子番号1番の水素は、原子核に中性子を持たない特別な原子である軽水素 1H が安定的に大量に存在するため、原子量は1.00794となり、2よりもかなり小さい。原子核に中性子を持たない特別な核種は、水素 1H と リチウム 3Li の二つしか存在せず、安定的に存在するのは、水素だけであり、水素は原子番号と原子量の関係が特殊である。
   原子番号3番のリチウムは、安定同位体のほとんどが 7Li であるため、原子量が6.9416から大きく外れている。これはリチウムの原子核の核子の結合エネルギーが例外的に小さく、軽元素であるにも関わらず、核分裂を起こしやすいためである(放射性という意味ではなく、安定核種の中でも分裂しやすいという意味)。
   原子番号4番のベリリウムは、13種類ある同位体のうち、安定同位体は 9Be のみであり、他の核種の寿命は非常に短いため、天然には同位体がひとつしか存在しない。ベリリウムの原子量9.012は、中性子過剰核である 9Be の質量に等しく、原子番号の2倍から大きく外れている。
    原子量が原子番号の2倍から大きく外れるこれら3つの例外、水素、リチウム、ベリリウムは、その理由が、同位体の原子核そのものにある。
  しかし、アルゴンの場合は、原子核にはこのような理由がなく、理論的には、陽子数と中性子数が等しい質量数36のアルゴン3636Ar)が最も存在比が大きくなるはずである。アルゴン36は安定同位体であるため減る理由がないため、測定される原子量も36に近くなるはずである。
  実際、太陽大気に含まれるアルゴンは、アルゴン3636Ar)の同位体比が84%である。太陽と太陽系の他の天体は、ほぼ同じ原材料(分子雲)から作られたため、この値は地球でも、ほぼ同じような値になるはずである。
    ところが、地球の空気中のアルゴンは、質量数40のアルゴン40(40Ar)99.6%もあるため、太陽系の平均値から大きく外れている。地球のアルゴン40(40Ar)は、軽元素であるにも関わらず、中性子が4個も過剰であり、太陽系の「普通」のアルゴン3636Ar)に比べて異常に重い。もし原始のアルゴンのままであれば、地球のアルゴンの同位体比も太陽と同じ組成になっていなければならないが、地球のアルゴンは、太陽とは起源が異なるということがはっきりと分かるほど組成が違うのである。
 レイリーとラムゼーは、新元素アルゴンを周期表に加える時にアルゴンの異常な重さに悩んだ。その理由は、地球の空気中に存在するアルゴンが、あとから作られたアルゴンだからである。
(5)放射性のカリウム
   地球のアルゴンの起源は、放射性のカリウムである。
カリウムには、32Kから55Kまで、2種類の安定同位体(39K41K)、22種類の放射性同位体、4種類の核異性体(32mK38m1K38m2K40mK)、合計28種類の同位体が存在する。
 天然には、39K(天然存在比93.3%)、40K(同117ppm)、41K(同6.7%)の3種類の同位体が存在し、39K41K は安定同位体、40K(カリウム40)は放射性同位体である。
  40Kがアルゴン(40Ar)の親物質となっている。
   放射性同位体は、他の核種に壊変して失われ、その存在量が変化するため、一般的には、天然存在比が示されない、あるいは、未確定とされることが多いが、40K(カリウム40)の場合は、天然に大量に存在し、半減期も比較的長いため、天然存在比の値117ppmが確定、報告されている。40K12.8億年の半減期で崩壊するので、地球創世記(46億年前)には、現在の約12倍の量の40Kが存在していたことになる。
   40Kは、β崩壊して主に40Ca(カルシウム40)に変わるが、一部(崩壊確率約11%)は、軌道電子を捕獲(EC崩壊と呼ぶ)して、40Ar(アルゴン40)になる。軌道電子捕獲とは、原子核が軌道電子を捕獲して原子番号がひとつ減る反応であり、空いた軌道に電子が遷移する時に特性X線が放出される放射性崩壊である、また 40Kは、極わずかβ崩壊して40Arになるが、放出される陽電子はすぐに対消滅してγ線になる。(これらの反応はいずれもβ崩壊に分類される。別項参照)
 
 
 カリウムのうち117ppmの 40K が12.8億年という比較的長い半減期でゆっくりと崩壊し、そのうちの11%だけが 40Ar になるので、カリウム全体からみるとカリウムがアルゴンに変換される速度は遅く、その数も少ない。
  しかし、カリウムはクラーク数では7番目に多い元素であり、地殻中や海水中に普遍的に存在し、その量は莫大であるため、生成されるアルゴン(40Ar)の量は莫大である。アルゴンは、希ガスであるにもかかわらず、現在、空気中に、9300ppmという高い濃度で存在し、40Kを親物質として生成され続けている。
   地球の大気の変遷をおおまかにみると、@初めからほとんど変っていない窒素、A莫大な量があったが海の生成などによって今では主成分ではなくなってしまった二酸化炭素、Bはじめは全くなかったが生物(植物)が作り出した酸素(分子)、Cカリウムが崩壊して作り出されるアルゴン、これら4つの元素の組み合わせによって空気や大気が作られてきた。
    40Kが、空気中のアルゴンの起源であるということは、あまり意識されることがないが、40Kの崩壊を利用する「カリウム−アルゴン法」は、最もよく知られている放射年代測定法である。たとえばマグマが固化した岩石を調べるとき、その中に閉じ込められている 40Ar を分析すれば固化年代が推定できる。天然の放射性物質(放射性同位体)の崩壊を利用した年代測定法には、ウラン−鉛年代測定法、アルゴン−アルゴン法、炭素1414C)法など20種類ほどが知られているが、カリウム−アルゴン法は、その中でも最もポピュラーな年代測定法のひとつである。
    カリウムは、岩石中に大量に含まれるだけでなく、動植物にとって必須元素であるため、生物の体内や食品には、必ず、 40K が含まれている。40K はβ崩壊とEC崩壊を起こす放射性同位体であるためカリウムは放射性物質である。したがって、一定量のカリウムを体内に保有する地球の生物は、放射性物質を保有しているということになる。カリウムは最も身近な放射性物質であるが、これは自然そのものであり、法令上、カリウムを放射性物質として取り扱うことはない。
   人間は、体内にカリウムがなければ生きていけない。また、40K の半減期は12.8億年と長いため 40Kは、の天然存在比は、人類の歴史の長さから考えると、これからもほとんど変わることはない。がなく、40Kによる放射線の内部被曝は常に避けることができない。40K は、ヒトの体重1kgあたり、放射能として60〜100ベクレル程度含まれるため、成人ひとりあたり、およそ4000ベクレル程の放射能を保有していることになる。40K による被曝は、人体が自然界から受ける放射線内部被曝のおよそ半分くらいを占め、年間0.17ミリシーベルト程度と推定されている。
   地上の生物は、空気や大気、地磁気などによって宇宙から(主に太陽から)の危険な放射線(宇宙線、荷電粒子、紫外線など)から守られている。
  この地磁気を作っているのは、地球内部の外核にある高温の液体金属であるが、地球が冷えて固まらないためには熱源が必要である。地球の熱源のうち、40K の崩壊熱の寄与は大きく、要するに 40K という放射性物質によって地球は生きた惑星となり、その結果、地上の生物は危険な太陽から守られているということになる。しかし、生物は、同時に 40K による内部からの放射線にも曝されているということになる。
   SF作家のアイザック・アシモフは自然界の放射線が生物の進化に与える影響を考えて、大昔40K による放射線が強かった時は、傷つきやすい長いゲノムが作られず、遠い未来に40K が減って放射線が減った時には、突然変異の出現率が大幅に低下するため、大昔も遠い将来のも、いずれの時代も生物は進化しないだろうと述べている。しかし、地球の生物は 40K という放射性物質が存在しない時代を知らないため、アシモフの説を確認する方法はない。