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新・漫画 ガスの話 |
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新・漫画ガスの話 32 作成日2020/10/18 更新日2022/04/05 Cガスの科学/17世紀の科学史 科学の歴史は英国の災厄とともに始まった 科学の始まり、ボイルの法則が公表された1660年代、英国は大変な災厄続きでした。 地球の寒冷化が進んだ17世紀は世界各地がたびたび飢饉に襲われますが、イングランドももテームズ川が凍り付くという状態になります。もし東京湾にそそぐ多摩川、荒川などが凍結したら大変な騒ぎになると思いますが、まだ鉄道や馬車道が十分に発達していない時代、海運が頼りの首都はマヒしてしまいます。 地球史の中で、この数十万年は氷河期の中の間氷期、地球全てが凍りつく状態の中での小休止の時代です。空気中の二酸化炭素濃度は地球ができてから最も低レベルの状態で推移しているため、植物生産は低下、人類の文明の歴史は、寒冷化と飢饉との戦いの中で進んできました。その中でも16世紀から17世紀は寒冷と飢饉の連続、温暖な日本でも飢饉が頻繁に起こった時代です。それでもテムズ川が凍り付くというのは滅多に起こることではありませんでした。 翌年、ロンドンをペストが襲います。現在のコロナ禍どころではありません。未知の疫病はその原因すらわからず治療法もありません。この時のペスト禍では人口の1/4が犠牲になりました。疫病発生のたびに起こる人々の分断化、デマ、陰謀説、差別、ペストも同じです。ロンドンだけでなく英国全土でも大学の閉鎖など18ヵ月にわたってペスト禍が続きます。 しかし、そうした状況でも戦争はなくならず、イングランドは新大陸のオランダ(ネーデルランド)の植民地ニューアムステルダムを侵略、名前をニューヨークに変えて征服します。欧州でもイングランドに反発したネーデルランドとの間で戦争が勃発します。 |
気候変動やペストで大変な状態でも戦争をやめない人間の愚かさに、さらに追い打ちをかけたのはロンドン大火、火災に対する防災ができていなかった中世の大都市ロンドンは大半が焼け落ち焦土と化してしまいます。 わずか2.3年の間にとんでもないことが続いたのです。英会話教室の英国人講師とコロナ禍の話をすると、1664年のペスト禍よりも1666年のロンドンの8割が焼失した大火の方が彼らの歴史の中では大きいのだそうです。 クリストファー・レンとロバート・フックは、ロンドン復興の最先端で働き始めますが、歴史に名前を残したのはレンでした。フックの業績が明らかになるのは300年もあとのことです。 現在、地球温暖化の議論がなされ、産業革命以前と比べた時の平均気温の上昇が話題になっています。産業革命以前と言うのは科学のスタート17世紀のことになると思いますが、この当時の北半球はかなり長い寒冷化の時代になっていて世界的な飢饉に見舞われています。大きな要因は太陽活動の低下だと考えられています。それによって温暖化ガスである空気中の水蒸気や二酸化炭素の濃度も低かったのだと想像されます。当時はまだ実用に耐える温度計は発明されておらず、世界的な気温の観測システムもありません。現代との直接の比較は非常に難しいと思いますが、産業革命以前の地球は凍り付いていたということは無視してはいけないと思っています。 寒冷化、疫病、大火、戦争、とんでもない時代に遭遇したレンやフックが行ったロンドン復興、長い時間がかかりました。 |